HPSプログラムは、筋肥大、パワー、筋力の強化を意識したパワーリフター用のプログラムです。
紹介されている論文はネット情報と印象は異なりますが、国内でもベンチプレスで効果が出たとの報告があります。
プログラムの中身を覗いてみると、1週間に筋肥大、神経系の向上、テクニック向上を詰め込んでいます。
筋肉あるあるチャンネルの動画で
「【筋トレ】1ヶ月半でベンチプレスを強くする「HPSトレーニング」とは!? BIG3の最強プログラムを解説!」をみつけました。
HPSプログラムについては、他にもYouTube動画やブログ記事が色々挙がっています。
その中で少し異なった視点の情報を発信しているのが
「科学的論文:HPSベンチプレスについて実際に評価します」です。
ここから参照できる論文を実際に読んでみると・・
ネット上の情報と論文の内容ではかなり乖離を感じます。
英文が日本語訳で表示されますが、内容を読み込むには少しハードルがあります。
論文の内容は、パワーリフターの上級者における、2種の非線形トレーニング(DUP)プログラムの効果の差についてのものです。
2種のプログラムは、HSPとHPSです。
HSPは従来(traditional)のトレーニング、HPSは改善された(modified)トレーニングと表現されています。
H=Hypertrophy(筋肥大)、P=Power(パワー)、S=Strength(筋力)を表しています。
2つのプログラムの違いは、簡単には順番を入れ替えていることです。
両方のプログラムともその前後で測定が行われパフォーマンスが上がっています。
注意するのは、この期間でピーキングがおこなわれるプログラムになっているので、その効果が含まれています。
サイクルトレーニングなどでも同様にサイクルの前後で、ピーキング効果も含め効果がでます。MAX自体が伸びているのと誤解しないことが重要です。
◆HSPとHPSのトレーニング前後の1MRの改善
HSP 前後伸び率 | HPS 前後伸び率 | 伸び率の差 | |
スクワット | 7.93% | 10.48% | 2.55% |
ベンチプレス | 2.71% | 8.13% | 5.42% |
デッドリフト | 6.7% | 7.57% | 0.87% |
ポイントは、HSPとHPS両方のプログラムでパフォーマンスの改善があり、HPSのベンチプレスではHSPに比べ5%以上の改善が見られることです。
この結果から、HPSはベンチプレスに向いているといわれています。
◆各種目のトータルボリュームの比較
このグラフで分かるように、HSPに比べHPSはトータルボリュームが増えています。順番を入れ替えることで疲労の蓄積が変わるようです。
1RMのパフォーマンスの伸びも、このトレーニングボリューム量が影響しているとも考えられます。
2つのプログラムは1種目あたり、週3日のトレーニングですが、もし3種目を同時に行っているのであればかなりハードな内容です。
基本は
Hの日は筋肥大を目的として 8reps × 5セット
Pの日はパワー上昇を目的として 1reps × 4~5セット
Sの日は筋力向上を目的として 85~95% 1RMで限界まで × 3セット
です。
実際の論文のデータでは、筋肥大の日とパワーの日は個人での調整が許されていて週がすすにつれてセット数が減っているようです。
そのためボリュームが変わっているようです。「科学的論文:HPSベンチプレスについて実際に評価します」参照してください。
1週目 | 2週目 | 3週目 | 4週目 | 5週目 | 6週目 | |
筋肥大の日 | 75% | 75% | 75% | 75% | 75% | 75% |
パワーの日 | 80% | 80% | 85% | 85% | 90% | 90% |
筋力の日 | 85% | 87.5% | 90% | 90% | 92.5% | 95% |
赤字は、実際の実験の時は個人で調整してよいとしたところです。
HPSプログラムの特徴
HPSプログラムの内容が分かってきたところで、改めてその特徴を考えてみます。
筋肥大の日は、8レップ5セットなので、ゴリゴリの筋肥大プログラムです。
パワーの日は、1レップでセットを組んでいるので、究極の神経系向上プログラムと1レップを挙げるテクニックの向上です。
筋力の日は、高重量で低レップのセットになるので神経系の向上のプログラムです。
更に非線形プログラム(DUP)で、徐々に重量を挙げてピークをつくるプログラムになっています。
一般的なプログラムとして、筋肥大の8レップ/3セットプログラムや、筋肥大も期待できる神経系プログラムである5×5などがあります。
これらのプログラムは、ある期間の目的(筋肥大や、神経系の向上、テクニックの習得)を設定して行っています。
このHPSプログラムの特徴は、1週間で色々な目的を達成するための内容を盛り込んだプログラムです。
このため、このプログラムに取組むためには、各々のトレーニング日の目的を意識して行う必要があります。
HPSプログラムは、HSPプログラムに比べて、ベンチプレスは効果的でありスクワットも効果が期待できそうです。
反面、ネット上にある多くの記事で言われるほど効果が現れるプログラムかどうかは疑問もあります。
理由は
・このプログラム自体がかなりハードなので、達成したその成果が効果がでているとも考えられます。
・更に、ピークをつくる前と後で比較していることも挙げられます。
これらのことを鑑みると、このプログラムがおすすめの人は
ベンチプレスのパフォーマンスを上げたい人で、ある日程までに(ピークをつくり)その目標を達成したい人です。